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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

御恩はふかい。しかし今日のことは、兵学の図式などではまにあわん。お会いできなくて、かえってよかった。老師ご自身、この大乱やら世の逆潮には、おそらく狼狽しておいでであろう。……正成、正季にむかって、かくすべしと、明示ある教えなどを、お持ち合せあるはずはない」

もうそこの煙をこめた一村落の夕闇に、蚊うなりのような人馬の喧騒がしていた。さきに屯していた正季の兵に、また正成の七百騎が到着したので、たちまち往来も木蔭も馬息れと人影でうずまった。

「御宿営は、そこの桜井寺に設えておきました。まずはおくつろぎを」

宿の駅門から山ぎわの方へ一、二町。薬師如来の一堂がある。桜井寺の境内だった。

「のちほど、お願いの儀もありますゆえ、あらためて、またお伺いすることにいたします」

何か、ここまでの間には、言い出しかねていたことらしい。そういうと、正季は、いちど自分の幕舎のほうへ帰って行った。

むうんと、暑い。

木蔭は青葉蒸れがする。それなのに、夜営の諸所ではバチバチ篝火をたいていた。防虫のためだろう。月もなし、風もない。

全陣の将士は、晩の兵糧に、かかっていたが、その一ト騒めきの初更が過ぎると、