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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
使者の細川和氏も、これを土産として帰るには、よほどな苦心を要したらしく、やおら革苞を解いて、
「まず、ご一読を」
と、尊氏の前においた。
それは彼が和氏を使いとしてわざと朝廷へ提出した“義貞弾劾状”にたいして、当の義貞が、ただちに「尊氏こそ八逆の賊である」と反駁上奏したと聞く全文の写しなのだった。
和氏は殿上の誰かにそっと手を廻して、それの写しを入手してもどって来たものにちがいない。……尊氏は手にとるや、眼をそばめてその全文を黙読していた。
一つ、何
一つ、何
と箇条書きにしてある自分への痛烈な八罪なるものに目を通していながら、尊氏の面にはしかしなんの波紋も起って来ず、むしろ容認しているふうですらあった。いやもっと何か目的を別にした「――思うつぼ」とこれを読んで、ほぼ満足のうちに巻き収めていたといえないことでもなかった。
「和氏。老躯に鞭打たせて、ご苦労だったが、使いの功は上々であったぞ。これでまず、義貞もじっとはしておられまい」
「されば即日、朝廷からは義貞へ、尊氏追討の総大将を任ぜられ、中書の宮尊良を上に、約三万騎、東海東山の両道から、ぞくぞく東へ下りつつありまする」