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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
和氏はべつな覚書をふところから取り出して、その密牒なども、尊氏の前にならべかけた。しかし、尊氏は手にもとらずこういった。
「待て待て。わしは世に告げてあるとおり籠居の身だ。軍事は聞いても、せんかたない。諸政一切も直義にまかせてあること、戦のことなら直義の許へ報告せい。この尊氏はあずかり知らん」
晩の勤行、朝のおつとめ。ここでの禅院生活を、尊氏は出家の身とも変りのない規律と日課の中においていた。
大塔ノ宮の霊
元弘の戦歿者敵味方の霊
高時の霊
いくたの有縁無縁の霊
に心からな回向をささげている姿にみえる。また心から朝廷へも恭順の意を表している彼かに見える。
もちろん、酒も魚肉も断ち、法衣こそつけていないが、道服すがたで、昼は机によって読書三昧、閑居まだ日は浅いが、倦む色もみえないのだった。
したがって、近習の細川頼春と一色右馬介も、庫裡の裏で、ぜひなく薪割りや水汲みまでをやっていた。彼らだけが日々ただ武者張って無為にもいられないのであろう。――今も、裏山から担ぎ出して来た粗朶のタバに腰をおろしていた二人はいささか味気ない顔の疲れを見あわせていた。
「右馬どの」