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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

山崎、芥川より先へは進み出るなと制しておけ」

と、すぐ軍命を持たせて、追撃中の味方へ、追ッかけの急使を派した。

そのころ、西陽はようやくうすれかけていた。――今朝の十時からいま午後五時ごろ――野に山に海に、まったく、たたかいは止み、あの阿鼻叫喚は、どこへ掻き消えたか、そしてどこから来るのやら、冷ややかな夕風が、妙にうらがなしい薄暮をあたりへただよわせはじめていた。

そのとき、わらわらっと二、三名の将が、尊氏の床几へ来て、こう告げた。

「ただいま、正成の首級をおたずさえあって、下御所(直義)さまと、高ノ師業、師久の両名が、御営門までおみえにござりますが」

「正成の」

「はい」

「首級を挙げて来たのか」

「そのよしにございまする。御実検は魚見堂の内でなされますか、それとも、ただちに御床几の下に持参いたしましょうやとのおたずねですが」

「そうか」

と、尊氏は、あらためて、自分へ言ってきかせるように呟いた。しかし、きっとなって。

「内へと申せ。実検は、魚見堂の内でしよう」

尊氏は、やがて魚見堂の方へあるいた。

そこも屋内ではない。

堂外の坪に幕をめぐらした営中というだけのもの。