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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

これは、尊氏として、坐視できない。武士の不平は、彼にすれば、彼のいだく大望の理想楼閣をきずく良材なのだ。味方なのだ。その素地を、北条再建軍にうばわれては、彼の立脚する所はなくなる。

かつは、朝廷としても、ここまできた北条討滅の意義は霧消してしまう。――だからたとえ朝命をまたず無断東征に赴いても、それは天下の御為ともいえるのではなかろうか。

尊氏は、しいて自分の行為に、そう理由づける。

直義とちがい、彼には暴を暴と知ってはできない思慮があった。朝廷度外などの不逞は敢てなしえないのだ。あくまで彼のなかには朝廷への崇敬があり、上への越権は気にかかるらしい。

にもかかわらず、彼は師直へ、無断離京の準備を命じた。

ひとつには、望んでいた征夷大将軍の補任が外れた業腹もあったが、なによりは弟直義を見殺しにはできないとする情があった。分別顔に似ず、情には奔るほうなのである。

明けて、八月二日は、空もようまでが、ただならなかった。颱風期である。どこか遠国で大荒れをしているのだろう。近畿いったいは強風だった。都の朝も雲脚の迅い明滅をしきりにして、加茂川の戦ぎがそのまま大内裏の木々をも轟々とゆすっていた。