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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

朱をたどれば、いわゆる「暗文」をなすのであった。

「介。これならば僧侶が持ってもふしぎはない。また他人が見ても解読はできぬ。併せて、これを道誉へ渡せ」

「こころえました。ではおあずかりしてまいりまする」

「ときに」

と、尊氏はことばをかえて。

「昨夜の小娘――棗と申したな――あの小むすめはどうしておるな」

「一室にふさぎこんでおりまする」

「朝餉は」

「与えました」

「逃げもせぬのか」

「は。朝餉を喰べたあとも、釜屋部屋の片すみに坐ったまま、じっと考えこんでいるのみで、べつに泣いてもおりませぬ。何か、ご処置のことでも」

「いやべつに」

「では、身の支度もございますので、このままおいとまを」

「待て待て」

「は」

「尊氏はつつしみの身、かかることを命じた者は、尊氏ではないぞ。裏山の網引き地蔵が命じるのだ。たとえ途中で直義の陣に行き会い、直義と出会うても申すなよ、道誉の件は」

「申すことではございませぬ」

右馬介は退がって、こっそり一と間のうちで頭をまろめ、法衣、頭陀袋の雲水姿になりすました。

同僚の頼春は、それを見て驚いた。しかしその頼春にさえ、介は、仔細を打ちあけなかった。そしてただ、