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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
「…………」
「申しては憚りながら、大塔ノ宮の仇とばかり、八ツ裂きにもいたしかねますまい。さらには、ご舎弟直義さまをも、お見殺しになさるお腹でございましょうか。いまや箱根の孤塁には、譜代の御一族の全生命が、ただ一つのお救いのみを、ひたすら、お待ちしておりますものを」
重房が言い疲れると、代ってまた、須賀左衛門が言って、尊氏へ迫った。
じっと、恐い目をしたまま、黙りこくっている尊氏へ。
「何としても、おきき入れかなわぬ上はこれまでのものです。御一門の魁に、まずわれら両名ここの御堂を拝借して、腹掻ッ切って相果てまする」
「…………」
「また直義さまも、孤軍の味方も、箱根の一塁を枕に、立ち腹切るか、斬り死にか、いずれともみな最期の途をえらぶでしょう」
「…………」
「ですが、これがわが殿のご誓約であったでしょうか。――そもそも元弘の初め、はじめてわが足利勢が上洛の途中、矢矧の柳堂において、一族宿老すべての者へ、ご大望を打ちあけられ、一同、源氏重代のみ旗と祖霊のまえで血判をいたしました。よもあれをお忘れではございますまい。いらい拙者どもは、それのみを、ただただ、弓矢の大願とちかい、子を捨て、親の死をも見てきました」