輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

と、その数百人も、自軍には加えなかった。

この意外な指令に驚いたのは、細川頼春、上杉重房、須賀左衛門らの左右だけではない。あたりの将士はみな、耳を疑った顔つきで、

「――では、いったい、孤軍の味方も援けに向わず、この軍はどこへ行くのか?」

と、一せいな怪しみを尊氏へそそぎあった。

尊氏はしかし何のためらいもなく、それらの一隊は元の箱根路へ返し、自身は自軍だけで、さらに酒匂の岸を上流へ急ぎ出した。

つい言いのこしていることがある。

それはさきに、尊氏の密命をうけて、浄光明寺の門から、旅の一雲水に化けて、どこへともなく立去っていた侍臣一色右馬介についてであるが。

その右馬介は、尊氏の軍が酒匂の駅に着いた日、

「途中、ご出馬と噂をきき、ここにお待ち申しておりました」

と、どこからともなく姿を現わし、彼の前へ来て初めてその破れ笠のひもを解いた。

「介か」

待ちかねていた尊氏は人を避けてすぐ彼とふたりだけで駅の伝馬役所の内に入り、しばし密談をかわしていた。

要は、介の報告であったにちがいない。――報告の内容に尊氏は満足した容子であった。彼がこれから臨まんとするいちかばちの戦場の賭けは、このときにおいて一そう腹がすわったものといっていい。