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こどもふどき

こども風土記・母の手毬歌

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《こども風土記・母の手毬歌(こどもふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 142,761 字 · 278 頁

青空文庫

千駄というような莫大な萱や木を、集めて焚いたのは遠い昔のことで、今ではただ藁や篠雑木などの松明を多く背負って、山に登ってゆくのが通例のようになり、また炬火だから夜にはいると、とちゅうからでも火を点して、行列をつくって頂上に到着すると、その残りのものを一ところに集めて、焚いてかえるのが雨乞いになってしまった。わたしなどの故郷では、夏のなかばの真暗な晩に、この炬火の長い行列をながめるのは、虫送りとともに美しい見ものであった。あの二つのちがうのは、虫送りは田の中だけを廻って早くかえってくるが、雨乞いのほうはだんだんに高くへ登り、また隣の村々の火も遠くから見える。たのしみは長かったかわりに、虫送りのように、毎年ひんぴんとは実行せられなかった。そうしておこりは一つにちがいないのだが、これはもう千焚きとも千把焚きとも、わたしの村ではいわぬようになっていたのである。昔の千駄焚きの壮観にくらべると、いくら美しくとも、これは事が小さく、思い切った手段ともいえないのであるが、しかも土地の人々は、このために祈願の力が弱くなったとは思わず、ついこのごろまで必死の場合には、この方法によるほかはないと考えていたのは、わたしには深い理由があることと思われる。