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みみずのたわこと

みみずのたはこと

徳冨 健次郎

線上閱讀徳冨 健次郎《みみずのたはこと(みみずのたわこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 265,437 字 · 530 頁

青空文庫

二人乗が二台。最早上方でなければ滅多に二人乗は見られぬ。姉妹は生れてはじめてである。

姉妹を乗せた車は先きに、余等三人を乗せた車は之につゞいて、瀬田川の岸に沿いつゝ平な道を馬場の方へ走る。日は入りかけて、樺色にじた雲が一つ湖天に浮いて居る。湖畔の村々には夕けぶりが立ち出した。鴉が鳴く。粟津に来た時は、並樹の松に碧い靄がかゝった。

「此れがねえ、木曾義仲が討死した粟津が原です」

と余は大きな声して先きの車を呼んだ。ふりかえった姉妹の顔も、唯ぼんやりと白かった。

車は一走りして、燈火明るい町の唯有る家の前に梶棒を下ろした。

「何だ」

「義仲寺どす」

余は呆気にとられた。八年前秋雨の寂しい日に来て見た義仲寺は、古風な巷に嵌まって、小さな趣ある庵だった。

余は舌鼓うって、門をたゝいて、強て開けてもらって内に入った。内は真闇である。車夫に提灯を持て来させて、妻や姉妹に木曾殿とばせをの墓を紹介した。

外には汽関車の響や人声が囂々と騒いで居る。

宇治の朝

宇治に着いたのが夜の九時。万碧楼菊屋に往って、川沿いの座敷に導かれた。近水楼台先得月、と中井桜洲山人の額がかゝって居る。