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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
線上閱讀徳冨 健次郎《みみずのたはこと(みみずのたわこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 265,437 字 · 530 頁
雪
と書き、それから
コイヌガウマレマシテ、カワイコトデアリマス
と書いた。これは鶴子女史が生れてはじめての作文だ。細君が其下に記憶の為「ゴネントムツキ」と年齢をかゝせた。
(明治四十四年 十二月十日)
雪
暮の廿八日は、午食前から雨になり、降りながら夜に入った。
夜の二時頃、枕辺近く撞と云った物音に、余は岸破と刎ね起きた。身繕いしてやゝしばし寝床に突立って居ると、忍び込んだと思った人の容子は無くて、戸の外にサラ/\サラ/\忍びやかな音がする。
「雪だ!」
先刻の物音は、樫の枝を滑り落ちた雪の響だったのだ。余は含笑みつゝまた眠った。
六時、起きて雨戸をあけると、白い光がぱっと眼を射た。縁先まで真白だ。最早五寸から積って居るが、まだ盛に降って居る。
去年は暖かで、ついぞ雪らしい雪を見なかった。年の内に五寸からの雪を見ることは、余等が千歳村の民になってからはじめてゞある。
余は奥書院の戸をあけた。西南を一目に見晴らす此処の座敷は、今雪の田園を額縁なしの画にして見せて居る。庭の内に高低参差とした十数本の松は、何れも忍び得る限り雪に撓わんで、最早払おうか今払おうかと思い貌に枝を揺々さして居る。