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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
線上閱讀徳冨 健次郎《みみずのたはこと(みみずのたわこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 265,437 字 · 530 頁
低い丘の上から
一
稀には彼が出たあとで、妻児が入ることもある。青天白日、庭の真中で大びらに女が行水するも、田舎住居のお蔭である。
夏は好い。夏が好い。
低い丘の上から
一
彼は毎に武蔵野の住民と称して居る。然し実を云えば、彼が住むあたりは、武蔵野も場末で、景が小さく、豪宕な気象に乏しい。真の武蔵野を見るべく、彼の家から近くて一里強北に当って居る中央東線の鉄路を踏み切って更に北せねばならぬ。武蔵野に住んで武蔵野の豪宕莽蒼の気を領することが出来ず、且居常流水の音を耳にすることが出来ぬのが、彼の毎々繰り返えす遺憾である。然し縁なればこそ来て六年も住んだ土地だ。平凡は平凡ながら、平凡の趣味も万更捨てたものでもない。
彼の住居は、東京の西三里、玉川の東一里、甲州街道から十丁程南に入って、北多摩郡中では最も東京に近い千歳村字粕谷の南耕地と云って、昔は追剥が出たの、大蛇が出て婆が腰をぬかしたのと伝説がある徳川の御林を、明治近くに拓いたものである。林を拓いて出来た新開地だけに、いずれも古くて三十年二十年前株を分けてもらった新家の部落で、粕谷中でも一番新しく、且人家が殊に疎な方面である。