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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
線上閱讀徳冨 健次郎《みみずのたはこと(みみずのたわこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 265,437 字 · 530 頁
六
其若葉は此あたりで春の目じるし、其鳶色は秋も深い目じるしである。北の方は、此欅の中の欅と下枝を払った数本のはら/\松を点景にして、林から畑、畑から村と、遠く武蔵野につゞいて居る。
六
家の門口は東にある。出ると直ぐ雑木林。彼の有ではないが、千金啻ならず彼に愛される。彼が家の背に、三角形をなす小さな櫟林と共に、春夏の際は若葉青葉の隧道を造る。青空から降る雨の様に落葉する頃は、人の往来の足音が耳に立つ。蛇の巣でもあるが、春は香の好いツボスミレ、金蘭銀蘭、エゴ、ヨツドヽメ、夏は白百合、撫子花、日おうぎ、秋は萩、女郎花、地楡、竜胆などが取々に咲く。ヨツドヽメの実も紅の玉を綴る。楢茸、湿地茸も少しは立つ。秋はさながらの虫籠で、松虫鈴虫の好い音はないが、轡虫などは喧しい程で、ともすれば家の中まで舞い込んでわめき立てる。今は無くなったが、先年まで其林の南、墓地の東隣に家があって、十五六の唖の兄と十二三になる盲の弟が、兄が提灯つけて見る眼を働かすれば、弟が聞く耳を立てゝ虫の音を指し、不具二人寄って一人前の虫採をしたものだ。最早其家はつぶれ、弟は東京で一人前の按摩になり、兄は本家に引取られて居るが、虫は秋毎に依然として鳴いて居る。