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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
線上閱讀徳冨 健次郎《みみずのたはこと(みみずのたわこと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 265,437 字 · 530 頁
読者に
(一)
詮方なくて今は其まゝにしてある。余が口笛を吹いたら、彼女はふっと見上げたが、やがて尾を垂れて、小さな足跡を深く雪に残しつゝ、裏の方へ往って了うた。
雪はまだしきりに降って居る。
余は思うともなく今年一年の出来事をさま/″\と思い浮べた。身の上、家の上、村の上、自国の上、外国の上、さま/″\と事多い一年であった。種々の形で世界の各所に現わるゝ、人心の昂奮、人間の動揺が、眼まぐろしくあらためて余の心の眼に映った。
何処に落着く世の中であろう?
余は久しく久しく何を見るともなく雪の中を見つめる。
大正元年暮の二十九日は蒼白う暮れて行く。
おのがじし舞ひ狂ひつるあともなし
世は一色の雪の夕暮
(大正元年 十二月二十九日)
読者に
(一)
読者諸君。
「みみずのたはこと」の出版は、大正二年の三月でした。それから今大正十二年十二月まで何時しか十年余の月日が立ちました。此十年余の限りない波瀾にも、最近の大震災にも幸に恙なく、ここに「みみずのたはこと」の巻末に於て、粕谷の書斎から遙に諸君と相見るを得るは、感謝の至です。
まことに大正の御代になっての斯十余年は、私共に、諸君に、日本に、はた世界にとって、極めて多事多難な十余年でありました。