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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「その駕。待てっ、益満」

六七間のところで叫ぶと、抜いて行った駕がとまって、益満が、口から煙草の煙を吐きながら、駕の中から振向いた。そして

「おおっ」

と、微笑して

「これは、御無礼」

追って来た侍は、真赤な顔をして、袴を左手で掴み上げながら

「出い、駕を出い」

益満は、頷いて、刀を左手に、駕を出た。見知らぬ浪人者が、腕捲りして、三人、益満を睨んで、三方から取巻いた。駕屋が、恐る恐る、駕を人々のところから引出して、道傍で、不安そうに、囁き合っていた。

「何れへ参る?」

「さあ、何れへ――」

益満は、ゆっくり、腰へ刀を差してから、喫い残りの煙管を、口へ当てて

「当途も無く」

「何っ、当途も無く?――御重役へ届け出でてお許しが出たか」

「いや、その辺、とんと、失念仕って――」

「こやつ、引っ捕えい」

侍は、一足引いて、浪人達に、顎で指図した。益満は、煙を吹き出しながら

「引捕える? 暫く暫く、一寸、一服して――こうなれば、尋常に――」

と、いいつつ、大刀の柄へ、煙管を当てた。とんとん二三度叩いて、灰殻を落した。そして、舌の先へ当てて、ぶつぶつと音させて、それから、懐の煙草をつまみ出して