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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

答えが、無かった。

「南郷」

「はっ」

「曲者が入った」

その大声の口早の、平常の調所の声でない声と同時に、襖が開いた。

「御前」

「曲者だっ。逃げたらしいが、早く捕えい」

供部屋の人々が、一時に、起き上った。一人が燧石を打った。閃滅する、微かな光の中に、人々が、刀を持って立っているのが判った。だが、調所の部屋までは、光が届かなかった。

二人が、廊下へ走って出た。調所の部屋へ入ると、一人が、襖の右の方へ立った。一人が、左の方へ立って、両方から包囲しようとした。付木がついたので、行燈へ灯が入ると共に、調所が、

「床の間を見てみい。片腕が、落ちてる筈じゃ」

と、いつもの調子で云った。南郷が、行燈を持って床の間へ近づいた。灯のとどくようになってきた床の間を、すかして見ていた調所が、首を延して

「無いか」

と、叫んで、寝床の上へ立上った。そして、床の間へ足早によって、手函の中を覗いた。眼が光った。

「しまった」

と、呟いた。床の間の上には、血が、夥しく淀んでいた。そして、確かに、落ちている筈の腕が無かった。南郷は、行燈を置いて、四方を見廻していた。

「追えっ。遠くへは、行くまい。