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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

「急ぎか。耳寄りな話か」

「何――一寸、そこまで、来てもらいたいんだが」

「心得た」

南玉は、土間の草履を、引っかけて、格子をくぐった。大家は、黙って、長屋の入口の方へ歩いて行った。

「昼間は、暖けえが、夜は矢張り、寒いね、大家さん」

「うん」

大家は、長屋の入口まで出ると、其処に立っている侍に

「召連れましてござります」

と、お辞儀をした。侍が

「桃牛舎南玉は、其方か」

「へえ、何か、御用で、ござりますか」

「身共は、奉行所の者であるが、その方の住居に、元、薩州の家来、仙波小太郎と申す者がおるか?」

南玉は、身体中を固くして

(しまった)

と、全身で叫んだ。

「済まねえが、師匠、外のことたあ違うんだから――俺――侍は、いるって、云ったよ。仕方ねえからのう」

大家は、気の毒そうに云った。南玉は、俯向いて、黙っていた。

「何んと致した?――返答が、できんとあれば、踏込むぞ」

「へえ」

侍が、左手を挙げた。軒下、家の横に忍んでいた捕吏が、足早に、近よって来た。

「この爺を、誰か、見張っておれ」

侍は、こう命じて

「素直に申さんと、為にならんぞ」

「全く――」

「何?」

「いえ、全く、為にはなりませんが――出し抜けに、びっくりしちまって、そう早くは、返事が――」