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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
靱負が、こういうと、吉之助は、手の甲で、眼を撫でた。
「斉彬へ、手紙を書いておいた。お前を、庭番にするようにと――親爺から、時々、聞いておるが、この先、当家を背負って立つ者は、軽輩に多いらしい。その中でも、わしは、お前を、見込んでいる。わしの存じている若者の中では、お前が、一等じゃ。未だ、思慮も、分別も、未熟なところはあろうが、わしは、お前の、素朴な、一本気な――その、すぐに泣くところが、大好きじゃ。斉彬には、それがない。お前が、斉彬から、学ぶものも、多いであろうし、斉彬が、お前から、省みることも、多いであろう。そして、お互に、えらくなる。わしは、斉彬をよく知っておる。当今、天下第一の人物じゃ。この人物に、お前が、薫陶されたなら、この末、よし、お由羅の陰謀が、成就しようとも、十分、久光を守立てて、天下に号令のできる人間になれるであろう。久光は、愚かではないが、斉彬あっての、久光じゃ。斉彬が無くなったら、無一物になろうかも知れん。その時、お前が、斉彬の意を帯して、久光の後見をしてくれたなら、当家は、三百諸侯の中で、矢張り、ただ今の如く、重きを置かれるであろう――斉彬は、よく士を愛するが、国許に、お前の居ることを知らんかもしれぬ。