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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁
闇の中から、女の声がした。
「急ぎの御用だ。戻りに、ゆっくり寄らあ」
小太郎が
「何者だ」
「これが、夜鷹じゃ」
ほの白く、顔が浮いて
「いい男だよ。ちょいと――」
小太郎は、袖を握られて、振払いざま
「無礼なっ」
女は、高い声で
「あっ、痛っ」
と、叫んで、すぐ
「いい男振るない。泥棒、かったい、唐変木」
と、浴せた。寺の塀の尽きるところまで、女達が、近くから、遠くから声をかけた。小太郎は、気まり悪さと、怒りとで、黙って急いだ。益満は、時々受け答えしながら
「諸事節約になってから、だんだんふえてきた」
と、独り言をいっていた。御成門から、植村出羽の邸に沿って曲り、土橋へ出ないで、新し橋の方へ進んだ。
斉彬は、多忙だったので、三田の藩邸にいずに、幸橋御門内の邸――元の華族会館――に起臥していたので、寛之助も、そこにおったのであった。
大きい門の闇の中に立って、高い窓へ
「夜中、憚り様、将曹様へ急用」
と、益満が叫んだ。
「門鑑」
益満が、門鑑を突き出して、提灯を、その上へもって行った。窓のところへも、提灯が出て、門鑑を調べた。門番は、門鑑を改めただけで、二人の顔は改めなかった。