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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

と、笑った。

富士春は、次の稽古の人々へ、三味線を合して

「主の姿は、初鮎か、青葉がくれに透いた肌、小意気な味の握り鮨と。さあ、ぬしいの」

と、唄いかけた時

「頼もう」

と、低いが、強い声がした。そんな四角張った案内は久しく聞いたことがなかった。御倹約令以来、侍は土蔵の中へ入って三味線を弾くくらいで、益満一人のほか、ぴたりと、稽古をしに来なくなったし――富士春は、唄をやめて、不安そうな眼をした。

(役人が、又何か、煩いことを)

と、思った。

「入れ」

益満が、答えた。格子が開いたので、富士春も人々も、大提灯のほの暗い蔭の下に立った人を眺めた。

(あいつだ)

と、人々の中の二人――昼間の喧嘩を見ていた人は思い出した。富士春は

(まあ、いい男――休さんの朋輩には、稀らしい――)

と、じっと、小太郎の顔を眺めていた。

益満と小太郎とは、小者風であった。脇差を一本、提灯を一つ――芝中門前町を出て、増上寺の塀の闇の中を、御成門の方へ、歩いて行った。

「多少、聞いてはいるが、忍術の忍は、忍ぶでなく、忍耐の忍だ。『正忍記』など、ただ、この忍耐だけを説いている」

「奴さん、遊んで行かっし」