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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 頁

青空文庫

島津修理大夫源斉彬

と、書かれてあった。

殆んど、顔を合せたことのない、自分の生まぬ子――お互に、顔を合せないようにしている斉彬の死に対して、お由羅は少しの感じもしなかった。

「御逝去になりました」

と、いって来た時に

(本当であろうか)

と、すら、疑い

(本当なら、意外に早く成就した)

と、感じただけで、自分の陰謀のために、呪いのために、自分の子が亡くなったということに対して、顔を知らぬ家来の死を聞いた程にも、感じなかった。

そして、こうして、仏壇の前に、珠数をもって、称名しているが、それは、自分の心の咎めを消すためでもなく、斉彬の冥福を祈るためでもなく、一つの、体裁としてのみであった。

お由羅は、称名を、口で、唱えながら、久光のことを、忠義のことを、斉興のことを、考えていた。

(これで、悉く、成就したと、将曹などが考えていてくれたなら、大間違いであろう。これからが、大切なのだから)

お由羅は、軽輩を恐れていたし、だんだん老衰して来る斉興を、覚束なく考えていたし、斉彬を崇拝している久光のことも不安であったし――それらのことが、悉く、自分の意のままに、解決されなければ、十分な成就とはいえない、と考えていた。