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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁

青空文庫

尾上幸蔵はその翌二十三年に初めて名題に昇った。したがって名題昇進ということは、本人らに取っても非常の名誉で、今度は誰々が名題になったそうだといって世間の噂話にもなった位である。勿論、俳優の名題昇進などということは、三年に一度あるか、五年に一度あるか判らない、まず滅多にはないものであると思われていた。その代りに、一旦名題に昇進した以上、それは押しも押されもしない立派な一人前の俳優で、名題俳優が草履取りの中間を勤めたり、名もない茶店の女を勤めたりするようなことは決してなかった。

それほどにむずかしい名題昇進がどんどん容易に行なわれるようになって来たのは、なんでも明治三十年以後のことで、それが更に甚だしくなったのは大正以後のことであろう。自然の道理で、名題昇進が容易になればなるほど、名題俳優が殖えれば殖えるほど、その権威も名誉も次第に薄れて、今日では昔の名題下がたびたび勤めた役を、立派な名題俳優が甘んじて勤めている。名題俳優というのは名儀ばかりで、事実においては昔の名題下とちっとも変わらないのが沢山ある。こうなると、特に名題とか名題下とかいう区別を設ける必要はないようにも思われる。