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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
団十郎の活歴
団十郎の活歴
明治十六年の正月三日であった。なんだか陰って寒い日で、わたしが横町から紙鳶をひき摺って帰って来て、ひる飯を食っていると――江戸時代の武家では、玄関から案内を乞う来客に対しては、女が取次ぎに出ないのが普通であった。わたしの家などにはその習慣が残っていて、玄関口の案内にはいつもわたしが出ていたのである――玄関で案内を求める声がきこえるので、大かた年始の客であろうと思って、わたしは箸を抛り出して直ぐに出てみると、双子の羽織を着た芝居者らしい男が立っていて、築地の成田屋からまいりましたが、直ぐにおいで下さいという。父は年始まわりに出ているので、いつごろ帰るか判らないと答えると、男はそのまま帰ってしまった。
わたしは再び横町へ出て紙鳶をあげていると、もう午後二時を過ぎた頃であろう。先刻の男がまたここを通りかかって、父はもう帰ったかと訊いたが、わたしは外へ出ているので知らないと答えると、男は再びわたしの家の方へ行ったらしかった。あとで聞くと、その時には父もちょうど帰っていて、すぐに築地へ出向いたとのことであった。
築地の成田屋といえば団十郎の家に相違ないが、なんの用で正月早々からうるさく呼びに来るのかと、母や姉が噂をしていると、日が暮れてから父は帰って来た。