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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁

青空文庫

木挽町の書生芝居

かれは魂の力で働いていたのであろう。

演伎座の興行は六月かぎりで、七月にはこの一座に猿之助が加わって、新富座で開演することになった。このときに新蔵は「鍋島猫騒動」の伊東左右太と、「紅葉狩」の鬼女をつとめたのである。わたしは何かの差支えがあって観なかったが、この鬼女もやはり大好評で、かれの病いはいよいよ重くなって来たにもかかわらず、舞台の上の台詞の声が新富座の前の往来にまで筒抜けに聞こえたということであった。

木挽町の書生芝居

二十八年の五月、川上音二郎の一座が歌舞伎座に出勤することになって、それが劇界の一問題となった。今日では殆んどなんの問題にもならないはずのことが、その時代においてはなかなか重大なる問題として、世間一般からも見なされたのであった。

日清戦争が彼の壮士芝居、書生芝居に偶然の好機会を与え、かれらの人気は一日ましに加わって、今まではあんな書生どもがと軽蔑していた人たちまでが、だんだんにそっちへ吸い付けられるようにもなった。しかし所詮かれらの根拠地は小劇場であって、市村座以外の大劇場へはひと足もふみ込むことが出来なかった。早くいえば、かれらの芸は鈍帳芝居の客にみせるものであって、大歌舞伎の客に見せるものではないという風にその相場をきめられていた。