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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁

青空文庫

団十郎の死

についていろいろのことを考えさせられた。その頃はまだ電車はなかったので、わたしは銀座から半蔵門まで十銭に値切った人力車に乗って帰ったのであるが、日比谷の公園もまだその工事が完成しない時分で、広い野原の上には初冬の暗い宵の空に弱々しい星のひかりが幾つか寂しく洩れていた。幌をかけていない車の上は寒いので、わたしは両袖をかきあわせながら俯向きがちにゆられて行った。わたしはこの年の四月に父をうしなったのである。菊五郎の衰老に対する悲哀が強くわたしの胸に食い入ったのも、幾分かそれが手伝っていたかも知れない。わたしの父も書きおろしの「弁天小僧」をみたということであった。

多年おなじ舞台に立っていた団十郎と菊五郎との顔あわせは、この「忠臣講釈」が最後であった。菊五郎としてはこの「弁天小僧」が最後の舞台であった。かれは明くる三十六年の二月十八日、六十歳を以てわが劇界と永久の別離を告げた。

団十郎の死

わたしはかなり感傷的の心持で菊五郎の死を語った。さらに団十郎の死について語らなければならない。今日、歌舞伎劇の滅亡云々を説く人があるが、正しく言えば、真の歌舞伎劇なるものはこの両名優の死と共にほろびたと言ってよい。