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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁

青空文庫

」と再び教えると、その人は「はあ、左様でございますか。」と更に丁寧に会釈して行き過ぎたが、やはり裏口の木戸からはいって行った。ひどく丁寧な、おとなしやかな人だと、わたしは子供心にも思ったが、あとで聞くと、それが守田勘弥という人であった。

守田は今度の引幕の件について、わたしの父のところへ挨拶を述べに来たのであった。わたしは半時間ばかり経って家へ帰ると、守田は奥の八畳の座敷で父と頻りに何か話していた。声は低いがときどきに笑い声がきこえた。守田は帰るときに母に向かって、「今度はぜひ御見物をねがいます。」などと言っていた。その時に守田が土産に持って来たのは西洋菓子の大きい折で、風月堂で買って来たのであった。明治十二年頃に西洋菓子などを持ちあるいているのは、よほど文明開化の人間、今日のいわゆるハイカラとかモダーンとか言うたぐいであったろうと思われる。父も「守田は変わった男だ。」と言っていた。

新富座の三月興行は二月二十八日からいよいよ開場して、例の引幕が舞台に懸けられることになった。これは後で聞いたことであるが、その引幕の費用全部を外国人側から支出したのではなく、外国人からは幾らかの金をまとめて寄贈し、それを土台に守田がまた幾らかの足し前をして、予定以上の立派なものを作りあげたのであって、彼としては多少の自腹を