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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁

青空文庫

実際、第一の論者とてもその理想としては女優論を高唱するものの、いかにしてその女優を作り出すかという具体的の問題に対しては、差し当たり適当の手段も方法も講じ得ないのであるから、結局は一種のハイカラ――この言葉はその当時の人の言わない事であった。ハイカラという言葉はそれから九年の後、明治三十二年頃から流行り出したのであるから、念のために断わって置く。その当時は専ら西洋かぶれと言っていた――論者であるとして、一般から冷笑を以て迎えられることになった。その当時の警視庁としては実におどろくべき大英断も、なんらの反響もなしにむなしく葬られた。

しかしこの場合に、誰もの口にのぼせられたのは、かの粂八の名であった。粂八ならば男優と同じ舞台に立って、おそらく遜色はあるまいと言われた。殊に彼女が団十郎の門下であり、団十郎崇拝である事情から、気の早い新聞では粂八が団十郎の相手になって歌舞伎座に出勤するかも知れないなどという噂話を書いたのもあった。かなりに野心の多いらしい粂八が、この機会をうかがって何らかの運動を試みたかどうだか、また一方の団十郎がそれについて何と考えていたか、私はそれらについて何も知らないのであるが、とにかくに粂八が大歌舞伎に出勤するらしいという噂がしばしば繰返されたのは事実であった。