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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
しかもそれは文字通りの“噂”にとどまって、どこの劇場でも在来の女芝居以外に女役者を雇い入れようとはしなかった。粂八はやはり女芝居の女王たるに過ぎなかった。わたしは今ここで個人としての粂八を論じたくない。単に一個の名女優として彼女を観るときは、彼女が四十年ほど早く生まれたのを彼女の不幸と認め、あわせて我が劇界の不幸と認めないわけには行かない。
粂八はその後、三崎座で四、五年ほども打ちつづけていたが、一座の座頭たるに適しないらしい彼女の性格が累をなして、一座の者に離反された。彼女は自分の弟子だけを引き連れて、それからそれへと流れ渡るようになった。その晩年の十年あまりは、世の進むに連れて新旧の男優の群れにもはいっていたが、それはすべて小芝居で、その一座も問題になるような俳優らではなかった。彼女は一面にその伎倆を認められながらも、単に時代おくれの、小芝居廻りの老いたる女役者として、その余生を送るに過ぎなかった。帝国劇場が開かれて、そこに女優という新しい名のおんなたちがたくさん現われてから三年目の秋に、彼女はさびしくこの世を去った。市川九女八は日本における女役者の最後であった。