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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁

青空文庫

演伎座の新蔵

演伎座の新蔵

明治二十八年の上半期において、最もわたしの記憶にのこっているのは、赤坂の演伎座における団十郎門下の興行であった。演伎座は初めに福禄座として赤坂溜池に建築され、それが稽古座とあらためられて、団十郎門下がかつて一度出勤したこともあったが、大劇場俳優が小劇場に出勤するのは、俳優組合規則を無視するものであるという批難が多く、その興行成績もあまり思わしくなかったので、一回かぎりで立消えとなって再び元の福禄座にかえり、小劇場俳優でともかくも興行をつづけていたが、やはりその成績が思わしくないらしく、さらに赤坂座となり、新市村座となり、幾たびか座名のみ変更して、小屋は殆んど腐ってしまって、山の手の客にも見かえられぬような悲境に陥っていたが、今年の一月興行から演伎座とあらたまって、再び団十郎門下が出勤するようになったので、この座もはじめて復活した。

俳優の顔ぶれは八百蔵、女寅、染五郎、新蔵、舛蔵などの青年俳優で、第一回興行は「地震加藤」と「黒船忠右衛門」と「関の扉」であったが、いずれも好評で、久しぶりで赤坂に歌舞伎の花を咲かせた。その時にわたしは初めて八百蔵の清正を見た。