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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁

青空文庫

それは七月の六日と記憶している。その前夜にも彼は麹町元園町のわたしの家へたずねて来たのであるが、あいにくわたしは不在であったので、翌日の早朝、わたしがまだ朝飯を食っているところへ再び押掛けて来たのであった。どんな急用があるのかと思って、二階の書斎へ通すと、かれは「お早うございます。」と挨拶しただけで、すぐにその用向きを言い出した。わたしに脚本をかいてくれというのである。新派の脚本は書けないと断わると、いや、新派ではない、旧劇である。自分は今度劇界の革新興行を企てた。従来の興行法ではどうしても観劇料が高くなるから、東京で一回の興行を終ると、その大道具衣裳かつら一切を持って地方幾カ所の巡回興行をつづけ、それを通算して十露盤を取ることにする。大道具もたたんで汽車に積んでゆくつもりである。劇は新旧二組にわかれて旗揚げをする。新は川上貞奴や深沢恒造などで九月から本郷座で開演し、旧は左団次、寿美蔵、又五郎、宗之助、莚若などに、大阪から延三郎、璃徳などが加わって、明治座で開演するはずであるから、その左団次一派の脚本をかいてもらいたい。史劇は鎧や太刀に金が掛かるから、なるべくは維新当時あたりの世界を択んで貰いたいと、かれは三十分あまりもひと息に弁じた。