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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁

青空文庫

それを名ごりとして、我々は舞台の上で団十郎の「暫」も「助六」も永久に見ることが出来なくなった。

前者は二十八年の十一月興行の中幕で、一番目は「大坂陣諸家記録」、二番目は「伊賀越道中双六」の岡崎と仇討であった。一番目は在来の大阪落城を桜痴居士が改作したもので、団十郎の宮内の局と新蔵の木村重成、この母子の別れの場が最も好評であった。二番目では団十郎の幸兵衛と八百蔵の政右衛門も好評であったが、とりわけて新蔵のお谷がよかった。かれはやはり片眼に繃帯して、大阪一の美男という木村重成と女形のお谷とを勤めていたのであった。

この興行は連日の大入りであったが、無論その呼び物は中幕の「暫」で、舞台にのぼるのは十八年ぶりだとかいうことであった。記憶のままにその主なる役割をかいてみると、鎌倉権五郎景政(団十郎)、その受けを勤める清原武衡(権十郎)、鯰坊主震斎(新蔵)、腹出し三人(猿之助、寿美蔵、八百蔵)、加茂次郎義綱(染五郎)などで、まずその当時においては立派な顔ぞろえと言うべきであったろう。わたしはこの時に「暫」という狂言を初めて見た。筋はもちろん単純なもので、これまでいろいろの記録によって想像していたのと大差なかったが、その舞台は豪壮華麗、なるほど江戸歌舞伎の華とはこれであろうかと、つくづく感嘆させられた。