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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
憤懣を感じたのは詐らざる告白である。殊にわたしは日本一の団十郎の芝居というものを甚だ詰まらなく感じている矢先きであるから、その不愉快は一層であった。「いやだ、いやだ。誰がこんな詰まらない、芝居などというものを書くものか。いやなこった。」と、わたしはまったく肚を決めていた。
二人は止め度もなしに何か話しているので、不平と退屈とが一緒になって、わたしはもう飽きあきしてしまったところへ、またもやここへ彼の守田勘弥がはいり込んで来て、例の丁寧な口調で頻りに話し始めた。相手が一人殖えたのであるから、話の種はいよいよ尽きそうもない。わたしはとうとう遣り切れなくなって、今までは眼もくれずにいた彼のカステラに手を出して、むしゃむしゃと食いはじめた。部屋の中にはもう瓦斯の灯がついたが、話はまだおしまいにならない。そのうちに団十郎は赤松満祐のときに着ていた衣裳、おそらく直垂か何かであったろう、茶渋のような色の着物を持ち出して、なにか講釈をはじめたので、わたしは実に我慢が出来なくなって、むやみにカステラを頬張って、そこにいる男の注いでくれる茶をがぶがぶ飲んでいた。定めて行儀の悪い児だと思われたであろうが、私としてはどうにも仕様がなかったのである。