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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁

青空文庫

の佐々木や、「堀河夜討」の藤弥太などを見た。かれが得意とする「六歌仙」の踊りを市村座と新富座で見た。それらは皆かれが傑作中の大なるもので、皆それぞれに他の追従を許さざる特色をそなえていることは確かに認められた。

前にもいう通り、かれに取って第一の強味はその舞台顔の立派なことであった。かれが大百のかつら、四天の着附、だんまりの場に出る山賊などに扮して、辻堂の扉などをあけてぐっと大きく睨んだとき、あらゆる俳優はその光りを失わなければならなかった。かれの眼は殊に鋭かった。いわゆる睨みの利く眼であったが、さりとて団十郎のように大きいのでもなく、団蔵のように凄いのでもなく、鋭いうちにも一種の愛嬌を含んでいるので、かれが葱売りの美しい娘などになれば、その眼がいかにも可愛らしく見えた。踊りが得意の人であるから、その形も勿論よかった。その芸もすこぶる古風で派手であった。かれが逝いて後、わたしは古風の歌舞伎劇を演ずるに適すること彼のごとき、顔と芸との持主を知らない。

他の俳優に比較すると、かれは早く老いて早く衰えた。また一方には、新狂言に適しないという大いなる弱点があるので、かれは次第に劇界の中心から遠ざけられた。