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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
あとで考えると、当日わたしたちが食わされた菓子と口取、午飯の弁当、鮨、夕飯、水菓子、これだけは当然註文すべきものであって、贅沢でもない、倹約でもない、極めて普通の散財で、土間や桟敷の見物人である以上、いやが応でもこれだけの品は註文しなければならないのであった。
これもその年代をはっきりと記憶していないが、かの“かべす”即ち菓子と弁当と鮨との三品を意味する言葉が、一般に通用するようになったのも、やはり明治十四、五年以後のことであると思う。勿論、その以前からそういう倹約な客もないではなかったが、例の“花より団子”主義で養成されている観客の多数は、芝居はうまい物を食わせる所のように考えていたらしかったから、すでに芝居小屋へはいった以上は、飲み食いについて余り倹約しようとは初めから考えていなかったらしい。それがいつとはなしにだんだん倹約になって来て、殊に彼の見連などという団体見物が盛んになるに連れて、菓子と弁当と鮨とで腹の虫をおさえ、ゆう飯は帰り途で食うか、家へ帰って食うとかいうような経済主義がひろく行なわれて来たらしい。実をいえば、むしろそれが本当のことで、劇場と料理屋とを混同しているような昔の観客は、確かに不心得者に相違ないのであるが、その余習のまだ失せない時代に哺くまれたわたしなどは、“かべす”などという