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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
こんな不愉快を忍んでまでも、劇作をしなければならない必要があるであろうか。いっそ岡君の主張した通りに、脚本を撤回してしまった方がよかったかも知れない。今度のことは今更やむをえないとしても、まず当分は芝居などを書こうとは思うまいと、わたしは考えた。わたしの頭は言い尽くされない不愉快を以て埋められていた。今と違って、堀端には宵から往来が少ない。師走の風は寒く吹いて、暗い水の上には雁の鳴く声がきこえた。その当時の情景は今でもありありと私の頭に残っている。わたしはその頃、戯曲「弟切草」を書きかけていたのであるが、家へ帰るとすぐにその原稿を本箱のなかへ押込んでしまった。
そんなわけであるから、自作がともかくも上演されるということに対して、岡君もわたしも余り多くの興味も期待も持たれなくなった。歌舞伎座は予定のごとく一月九日から開場したが、この興行は成績が思わしくなかったようであった。諸新聞の劇評もあまり注意して読まなかったが、毀誉相半ばするという程度であったらしい。かの『続々歌舞伎年代記』には、この二番目狂言“世評よからず”とある。それが本当であったかも知れない。