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めいじげきだん ランプのもとにて

明治劇談 ランプの下にて

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁

青空文庫

、居士の作中では不評のものであった。

団十郎はこの興行を無事につとめて、さらに五月興行にも出演した。狂言は一番目「春日局」、中幕「素襖落」、二番目「駒形おせん」で、団十郎は一番目だけに登場し、春日局と徳川家康の二役に扮した。それは明治二十四年の六月、この座で初めて上演された桜痴居士の作で、団十郎は今度が二度目であったが、その衰残のすがたが著るしく眼について、恐らくこれが最後の舞台ではないかという一種の予覚を我々にあたえた。菊五郎逝き、団十郎の舞台は長からず、東京の芝居はどうなるであろうかと、ひそかに眉をひそめた好劇家も少なくなかった。それでもこの興行もとどこおりなく勤め終って、かれはこの年の夏を相州茅ヶ崎の別荘に過ごした。暑中と寒中に芝居を休むのは、かれが年々の例であった。

いまの市村羽左衛門はそのころ市村家橘といっていたのであるが、その年の秋興行から十五代目羽左衛門を相続することになったので、その披露のために各新聞社の劇評記者を大森の松浅に招いた。わたしも『東京日日新聞』の劇評記者として出席することになった。九月十三日、その日は日曜日で、朝から秋らしい雨がしとしとと降っていた。