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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
――おその六三をざんぎり物に書き直した新狂言に、五代目菊五郎が大工の六三郎に扮し、八代目岩井半四郎が福島屋の娘お園に扮して、いずれも好評を博したのから起こったもので、六三がけは大工の鉋屑になぞらえて作られた一種の頭掛けであるが、その鉋屑のような物が時節柄なんとなく涼しげに見えるせいかも知れない、東京の若い女のあたまの上には、鉋屑の六三掛けがむやみに結び付けられていた。下町ばかりでなく、しまいには山の手にまでその流行がだんだんに拡がって来て、わたしの近所の娘たちも皆それを掛けていた。勿論、その後にも俳優や芝居に関する流行物はたくさんに出来たが、どうも彼の六三掛けほどの勢力はなかったらしい。
わたしの記憶している限りでは、これが歌舞伎から生み出された流行物の打止めであったらしく、今の歌右衛門が福助の人気盛りにも、櫛かんざしを始めとして、裏梅の模様を付けた物がずいぶん流行したが、この六三がけのように、一つの狂言に因んだ物がこれほど汎くは行なわれなかったようである。これは俳優の人気ということ以外に、明治十四、五年頃までは江戸時代の気風がまだ余分に残っていたためであろう。