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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
守田勘弥
それはあらかじめ断わって置く。
ここに語られる世界は、電車も自動車もなかった時代である。電灯や瓦斯灯の使用も、官省、銀行、会社、工場、商店、その他の人寄せ場に限られて、一般の住宅ではまだランプをとぼしていた時代である。したがって、この昔話も煌々たる電灯の下で語るよりは、薄暗いランプの下で語るべき種類のものであるかも知れない。
その意味で、題名にランプを択んだのであるが、もし読者がその旧きを嫌わずして、明るい電灯の下でこの一冊を繙かれるならば、著者に取っては幸いである。
昭和十年二月
岡本綺堂
守田勘弥
こういう話をする以上、どうしても自分の年を隠すことは出来ない。わたしは明治五年十月の生まれで、その年の冬に陽暦に変わったのである。その頃は米の値が非常に廉くて、一石三円六十何銭であったと聞いている。そういう暢気な時代に生まれた人間のむかし話であるから、あまり要領を得たものでないということを、最初にお断わり申しておく必要がある。もう一つには、この話は特に調査や穿索をしたわけではなく、すべて私のおぼつかない記憶をたどって、自分の見聞にかかる事件のみを語るのであるから、自然の結果として、一面にはとかくに自己を語るような傾きにもなりがちであるが、わたしは決して自叙伝を書くつもりで筆を執っているのではない。