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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《明治劇談 ランプの下にて(めいじげきだん ランプのもとにて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 167,283 字 · 329 頁
や「四千両」や「加賀鳶」などの正本であった。わたしはこんな物が続々発行されていることをちっとも知らなかったが、アストン氏は銀座の本屋で見付けて来たのである。わたしは雀躍するほどに喜んで、すぐにそれを借りて来て読み耽った。
読んでみると、わたしは驚いた。まったく驚いた。芝居を書くというのは大変なことだと思った。というのは、その道具立てや、出入りの鳴物や合方のたぐいが、わたしにはちっとも判らないからであった。かつて「霜夜鐘」などを読んだ時には、まだほんとうの子供であったので、そんなことは恐らく夢中で読み過したのであろうが、今になってよく注意して読んでみると、判らないことおびただしい。たとえば“さんげさんげの合方にて幕明く”とか、“地蔵和讃の合方になり”とか、“白ばやしにて幕明く”とか、何のことかちっとも判らないのである。こういうことを残らず呑み込まなければ、芝居は書けないものかと思うと、わたしは実に怖ろしくなって来た。これを一々研究するのは容易なことではあるまいと、しみじみ考えた。
今日の劇をかく人、劇を書こうとする人、劇を研究する人、おそらく“さんげさんげ”が何であろうが、“地蔵和讃”が何であろうが、殆んど問題にしていないであろうが、その時代のわたしには、それを知らないでは芝居は書けないもののように一途に