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しゅんでい

春泥・三の酉

久保田 万太郎

線上閱讀久保田 万太郎《春泥・三の酉(しゅんでい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 86,075 字 · 173 頁

青空文庫

九

「さァ、おい、早いところ出かけよう。」

……ちょうど、それは、冬至の日の、時間にして西巻が湯に行く途中、鰻屋の出前持と機嫌よく立話をしていたと同じころだった。――刻限はよし、天気はよし、どのみち三人あつまればそのまんま恰好をつけずにわかれるわけがない。……田代にしても、そこはしまりのない東京育ちの、あらかじめそんなことになるだろうとは思っていたのである。――三浦のいう通りどうせ手のついた金だ、足りないものだ、いざとなればまたどうにかなるだろう。――かれはくゝるつもりもなく多寡をくゝった……

「わるい友だちはもつもんじゃァない。」

わざと、ふしょう不承、田代もそういいつゝ立上った。――と、そのとき、急におもての格子があいた。

「御免……」

九

……聞覚えのある声である。――おもわず田代は二人の顔をみた。

「どなた?」

小倉の代りに三浦が突ッ慳貪にそれにこたえた。

「へえ、わたくしで。――吉沢で……」

「吉沢?」

……といえば「矢の倉」の男衆。――中洲時分から附いている由良のところの男衆である。

「何だ、君。――誰かと思った。」

障子をあけて拍子抜のしたように田代はいった。