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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
線上閱讀国木田 独歩《武蔵野(わすれえぬひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,018 字 · 192 頁
秋山は一枚二枚開けて見てところどころ読んで見て、
『スケッチにはスケッチだけのおもしろ味があるから少し拝見したいねエ。』
『まアちょっと借して見たまえ。』
と大津は秋山の手から原稿を取って、ところどころあけて見ていたが、二人はしばらく無言であった。戸外の風雨の声がこの時今さらのように二人の耳に入った。大津は自分の書いた原稿を見つめたままじっと耳を傾けて夢心地になった。
『こんな晩は君の領分だねエ。』
秋山の声は大津の耳に入らないらしい。返事もしないでいる。風雨の音を聞いているのか、原稿を見ているのか、はた遠く百里のかなたの人を憶っているのか、秋山は心のうちで、大津の今の顔、今の目元はわが領分だなと思った。
『君がこれを読むよりか、僕がこの題で話した方がよさそうだ。どうです、君は聴きますか。この原稿はほんの大要を書き止めて置いたのだから読んだってわからないからねエ。』
夢からさめたような目つきをして大津は目を秋山の方に転じた。
『詳しく話して聞かされるならなおのことさ。』
と秋山が大津の目を見ると、大津の目は少し涙にうるんでいて、異様な光を放っていた。
『僕はなるべく詳しく話すよ、おもしろくないと思ったら、遠慮なく注意してくれたまえ。