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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

行く行く兵は増すばかりで、翌々日、近江番場へかかったとき、引田妙源は尊氏へ

「お供の軍勢はもう四千をかぞえまする」

と、告げていた。

在京の武門のほぼ三分の一は尊氏を慕って従いて来たし、土地土地の無主無名のやからも、腹当一つに柄もほつれた腰刀や、古長巻など引っかかえて、十人二十人の徒党で「――足利の宰相が御東下の端に」と、陣へ投じて来るのであった。もとより深い頼みにはならぬ烏合だが、ばかにならない数にはなる。

やがて、不破ノ関は近い。柏原ノ宿場だ。ここには約束の佐々木道誉が、約をたがえず、自軍を立て並べて待っていた。

尊氏の姿を見ると、道誉は、宿場の一陣屋から立ち出て来た。そしていつもの倨傲な彼とは別人のように、腰ひくく、

「御着。お待ち申しあげておりました」

と、臣礼をとって、

「軍旅のお疲れもやと、あれにご休息の用意をさせおきまいてござりまする。……いかがでしょう。しばしお憩いあっては」

と、誘いかけた。

「いや」

と尊氏は、鞍上のまま。

「知っての通りだ。直義の安否も気づかわれる矢さき、このまま行こう。御辺もすぐつづいてまいられい」

「もとより伊吹の手兵一千、挙げて参陣の心ぐみで、これにひかえておりましたなれど、寸時、彼方の陣屋の内で、このさい会うてお上げなされてはいかがなものと愚考しますが」