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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

「すわ、御国の大事」

顕家は、勅を拝すなりその遠さにまず胸がつかえた。

鎌倉までとしても半月の余はかかる。彼は父の親房にはかって、地方政所ノ執事、評定所所員、侍所の面々、寺社、安堵奉行までを加えて、国司の議場で大評議をひらいた。そしてその場ですぐ宣言した。

「案じられる! このたびの大乱こそ、御国のありかたを決するものだ! 一日のまも猶予はならぬ。わしは今日にも多賀城を立つ。――家の子郎党の糾合などに手間取るものは、急いであとより追ッかけて来い。――柵の留守には、南部師行、冷泉家行らを残す。――あとはすべてわしにつづけ。時を逸して、馳せおくれたら一代の不覚だろうぞ」

顕家は時に十八歳だった。

おととし十六の秋に、奥州鎮定の大任を負い、幼い義良親王を上に、父の親房や結城宗広を後見として、この地へくだって来ていたのである。

陸羽の奥はまだ蝦夷地のままといってよい。乱妨、反乱、同族の闘いなど、絶えまもない。――顕家は二年の在任ですっかり戦陣の起居に馴れた。根は根からの大宮人、任は国司という文官なのだが、いつか純粋花のようなこの童貞の人は、自身を馬上の将軍にきたえていた。