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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

尊氏は陣幕の内に入れて敷物を与え、そこらの将士をしりぞけてから、自分も楯の上に胡坐した。

「尼前ではないか。どうしてこのようなあぶない所へは」

「オ、尊氏さま」

と、草心尼は、旅のわらじのまま居住居をちょっとかえて。

「おもいがけなくお目にかかり、またお変りもあらせられず、こんなうれしいことはございませぬ」

「いや尼前、六波羅にいた頃とは、大変りだ。其許たちの目から見たら、今の尊氏のすがたなど羅刹のように見えようがな。……生きるか死ぬかだ。はははは」

と、自嘲して。

「が、われらは是非もない。これや宿業だ。したが、何も知らぬ其許たちこそ、世の大波に、さぞや憂き目を見つらんと、ひそかに案じておった。さるを、なぜ洛中を出て、戦場などへ」

「いえ、洛中こそが、居るところもない修羅地獄でございました」

「おおそうよの。洛の北山も東山も、あの大戦では」

「あなたこなた、逃げさまよい、火にも追われ、ぜひなく、明石の知る辺をたよって、淀の西をまいる途中、新田殿の御陣に捕まり、きのうまでは、御陣について、歩き暮れておりました」

「では、義貞のそばに」

「はい、むかしの世良田殿も、いまはいかめしゅう、総大将の陣座にわせられ、尼前よ、心配すな、そばにおれ、いくさはすぐにすむ。