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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
おそらくは、おん眉をひそめておわすに相違ない。わけて公卿座に居ならんでいる顔、顔、顔……のすべては、みな、にがりきって正成を見すえていた。
直言にも程がある。
時の人、左中将義貞をさして、こんなにまで無遠慮に評価し切った者がほかにあるだろうか。公卿たちは、正成の正気をさえ疑って、ただあきれるのみだった。
しかし後醍醐はさすが、帝王の寛い御分別ともいうべきか。正成を観るにも、彼らの冷蔑や気色ばみとは、はるかにお心の在り方がちがっている。――これは容易ならぬ正成の決意――と、みそなわせられたらしく、御簾をとおして、彼の姿へいちばいな凝視を垂れ、
「正成」
と、呼ばれていた。
「はっ」
「そちは、尊氏が何者なるかを、わきまえておるのか。あきらかに、彼は幕府を立て、おのれその幕府の上に臨まんとする者だぞ」
「御諚。そのとおりとぞんじられます」
「しかるに、そちは言ったな。君臣一和、公武合体の制をとれとか」
「はい」
「ならば、王政一新の実はどこにおくか。幕府を廃め、政を古に回すなどは空名になる」
「さは相なるまいかと思いまする」
「どうして」
「上おんみずから、親しく諸政をみそなわす儀は、うごかざる政の大本として、その下における武門の統御のみを、尊氏におゆだねあらせられるぶんには」