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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

――歩むこと、まさに七歩目、曹植は哀しげに一詩をさけんだ。

豆ヲ煮ルニ

豆ノヲ燃ク

豆ハ釜中ニ在リ泣ク

本コレ同根ヨリ生ズルモノヲ

相ヒ煎ルコトノ

何ンゾ太ダシク急ナル

詩は、五言四絶、わずか二十字にすぎないが、同胞相剋の悲泣とうらみを訴えて人の胸を打たずにおかない。

文帝も詩の真理にうごかされ、以後は弟の天性とその好む所にまかせたとのことである。

龍顔はくもって、はたと、ご苦悶のいろかのように仰がれた。

七歩ノ詩は聖慮にとり決してご愉快な詩であろうはずがない。万民は赤子とか。

たとえ、どういう御理想によろうが、たたかいは帝王の最大な罪と御自身責められているはずである。戦とは――豆ヲ煮ルニ豆ノ豆ガラヲ燃ク――ようなもの。また――本コレ根ハ同ツカラ生ジタモノ――。どんなたたかいにせよ、赤子の殺し合いは、それだけでも最大な御悲嘆でなければならない。

まさに、今の世を観れば、万民は釜の中で煮られている豆のようなものだった。そして釜の下を焚きやまぬ焔も、ひとつ根の親とも兄弟ともいえる豆の豆ガラなのである。

豆は、何を怨めばいいのか。――沸々たる熱湯の中の悲泣は、たれが聞いてくれるのか。