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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

秋の収穫はこれからの丹精にある。そのような野良の手を、城普請のために徴発してはならんとあって」

「それでは遅々と進まぬ道理だ。とかく兄上の御意志はわれらには酌みかねる」

「自分にも分らぬ。たとえば……」と、季綱は設計絵図をとり出して示しながら「ここに二の丸を拡げ、さらに搦手門の上に、北曲輪を建て増し、また本丸には、多少、普請らしい工を凝らして、正成殿をはじめ、御台所や和子たちにも、河内和泉の御守護らしく、ここへお城住居を仰ごうと申しあげるのだが、それも御気分に合わぬらしい。いまの水分で事足ると言っておられる」

「やがては、入道して、山林の一庵にでも籠りたい気でおられるのではないか」

「よもや」

「よもやとは思うがだ」

「それくらいなら、さき頃のような、思いきった御諫奏などはなされまい」

「が、それは用いられず、堂上の笑いぐさとなり、みかどのご逆鱗にふれたらしくもある。……いらい、怏々として、浮かぬお顔。……この正季にも、四天王寺を引払って、河内へ帰れとのおさしずであったには、むっとして、何でそのように新田や世上へ遠慮ぶかくなさるのかと、兄上と一ト論議も覚悟でこれへ戻ったが、さてあのお顔を見ると何もいえなくなってしもう」