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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

杯もめぐって。

「なるほど」

人々はみな、土地の醸造をまず賞めた。

「これが、吉備の酒か」

「どこかちがう」

「いや、ずんと佳い。東国酒とはくらべものにならぬ」

「それに今日は重五の節句だ」

「さよう、男の日」

「いまや曠れの御上洛、その途上にある美味さも心に加味されていよう。……お。おん僧もこれへ加わり給え」

と諸将は、それへ見えた道謙にも、座をわかって、藹々とみな仲よく頬を染め合った。

道謙がやがて言った。

「かかるお忙しい御途上ですのに、愚衲にはどうも何か意外な感がして相なりませぬ」

「なにが、意外」

と、直義がたずねると、和上は歯にきぬを着せぬたちの者とみえて。

「愚衲らの心にある常識では、およそ関東の武家方は、武弁殺伐……ただそれだけの者としかつい心得ておりませなんだが……。容易ならぬ先の軍をまえにして、悠々と、連歌のお催しあるなどは、何やらゆかしい、古の武者を偲ばせられまする」

「はははは。関東酒なみに、われら東国の人間どもも、味ないものに観られていたか」

「いや、今日からは、人にもさような誤解は、篤とたしなめてやらねばなりませぬ。いなか者の目の狭さ。愚衲も恥じ入ったことにござりまする。