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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

また。――下御所(弟、直義)は、陸軍をひきいて、高ノ師泰を旗本頭とし、少弐ノ頼尚を先陣に、筑紫、長門、周防、安芸、備前、備中の兵をこぞッて陸上を行く。

途中も陸海両軍は、緊密な連絡をたもちながら、東上をすすめて行くときまり、五月十日、鞆ノ津を一せいに発った。

陸上七万騎。

軍船千百余艘。

あわせて、八万余騎と公称したが、もとより実数ではなかった。けれど近来、世人の覚えにもない大兵力であることに世間疑った者はない。

これが陸を行き、海を掃いて進んで行くさまは、けだし壮観をきわめたであろう。「梅松論」の筆者も、

船路、陸地

同日に御進発なり

しばしがほどは

両々、見通はして

船、陸を呼び

陸、船に応ふ……

と、いっている。衝天の意気、思うべしで、海上には、尊氏の乗船が、数百そうの船列の中に、二引両の紋幕をヒラめかせているのが望まれ、陸路には、先陣をゆく少弐頼尚の、綾藺笠の旗じるしが、あざらかなほど見えたという。

ところがやがて、海上では一ト騒ぎが起っていた。

この船列が、水島灘へかかった日のことである。先頭を切ッて哨戒して行く串崎船の檣頭に、

敵アリ

御用意

の赤い信号旗がのぞまれたので、全船隊は「すわ!」