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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

卯木の目を離れた幼子たちの姿は、もうどこにも見えはしない。彼女は西の対の屋へあがって行った。そしてしばらく室内で正成と話していたが、まもなくまた垣の外へ戻って来て。

「赤鶴さま。どうもお待たせいたしました」

「なんの、なんの」

「正成さまの仰せには、これはお忘れ物ではないとのことでございますよ」

「はて、そんなわけはございませぬ。たしかにこれは」

「いえ……御承知の上、つまりあなたへ差上げる思し召で、わざと置いてお帰りになったのだそうですから」

「えっ?」

と、彼女のさしだす物へ手を振って。

「めッそうもない。そのような物を、わたくしめが、いただくいわれはございませぬわい」

「ですが、おことばでは――たびたび赤鶴の小屋へ立寄っては、仕事のさまたげをしたことゆえ、さだめし迷惑なことであったろう、と」

「どういたしまして、てまえの拙い仮面作りを、どこがお気に入ってやら、一心に見ていただき、その都度、いつも張り合いを覚えたほどでございまする」

「では、その御褒美のおつもりなのでしょう。いッそありがたくいただいておきなされませ。そして、いちばい御精をこめて、いつかいちど佳いお作を打って、お目にかけたらよいではありませんか」